フリードリヒ2世の実験は嘘?

■はじめに/中世の人体実験 いわゆる「神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ2世の実験」だが、日本語圏インターネットに流布している内容としては ・複数の赤ん坊(一説50人とも)が対象 ・赤ん坊たちを世話する乳母たちは言葉をかけることを禁止され、さらに顔を…

パラディ島の名前について île paradis

進撃の巨人の舞台「パラディ島」の名前の由来はフランス語paradis「楽園」。(英)paradise も(仏)paradisも(羅)paradisus由来だが、これは(古希)παράδεισος(parádeisos)「楽園/庭」を経由して(イラン祖語)*paridayjah「(壁に囲まれた)庭」に遡れ…

ジェミー・ボタンについて

ティエラ・デル・フエゴにかつて住んでいたヤーガン族、その中で歴史上に名前を残したほぼ唯一の者といえそうなのがジェミー・ボタンである。Wikipedia日本語版には彼の独立記事はない。というわけで、Wikipedia英語版の記事を参照しながら彼の人生を下記す…

ニュートンマスとニュートン祭

アイザック・ニュートンが1642年12月25日のクリスマス生まれな点に因み、12月25日をクリスマスではなく敢えて”Newtonmas”「ニュートンマス」と呼ぶ一種のジョークが存在する。 このNewtonmasなる単語の初出は割合古く、Wiktionaryによれば1892年9月のNature…

コロンブスのスペイン語

ウェブ上で興味深い論文を見つけた。 大航海時代の外国語学習--コロンブスの場合 (堀田, 2014) 愛知県立大学学術リポジトリ コロンブスの書き残したスペイン語にはセディーユが含まれている。(当時のスペイン語では現在"z"を使う箇所で"ç"を使用) また彼の…

戦略爆撃の講義

東大教養学部にて、選択科目の近現代史で「戦略爆撃」をテーマにした異色の講義があった。※ずいぶん昔の話なので、さずがにもう無いと思われる 20世紀の戦略爆撃史を概観する内容で、日本軍による重慶爆撃に始まり、連合軍によるドレスデン爆撃、東京大空襲…

beltの語源はエトルリア語

en.wiktionary.org balteus - Wiktionary エトルリア語に起源をもつラテン語balteus→ゲルマン祖語*baltijaz→英語belt →スペイン語balteo スペイン語balteoは「ベルト」の意味だがほとんど使われず、専らcinturónが用いられる。 ちなみにコンベアベルトのよう…

パトロン・パターン・メセナ/パターナリズムとパターン主義

父権主義・温情主義などと訳される英語"paternalism"=「パターナリズム」。 Paternalism - Wikipedia パターナリズム - Wikipedia この語の語源だが、直にラテン語"pater"を参照する説が日本語ネット上でしばしば見かけられる。だが、見ればわかる通りこの語…

スペイン語の左右

スペイン語では (西)derecha:右 (西)izquierda:左 であるが、文語としては以下の単語も存在する。 (西)diestro:右の、器用な (西)siniestro:左の、不吉な これらの語源は以下のラテン語である。 (ラテン)dexter:右 (ラテン)sinister:左 「…

古代ローマとエトルリア人

古代ローマはエトルリア人を吸収・同化したが、エトルリア人はローマに抵抗なく受け入れられたのだろうか? 王政時代にはエトルリア人がローマ王になったりしており、ローマ人と対等に扱われていたように思っていた。なので平和裏にかつ自然に同化が進んだも…

スッラの墓碑:最良の友人にして最悪の敵

米第一海兵師団のモットー"No Better Friend, No Worse Enemy" 日本版Wikipediaでは「より善き友、強き敵」と訳しているが、この元ネタとなったのは古代ローマの独裁官スッラの(自作の)墓碑銘であり、その英訳とされているのは以下の通り。 "No friend eve…

ジパングあるいはシパンゴ

Cipango - Wikipedia, la enciclopedia libre いわゆる黄金の島ジパングーZipanguとしておなじみの名前だが、欧州ではCipangoあるいはCipanguがメインであり、イタリア語でややZipanguの用例が見られる、という程度らしい。 シパンゴ・シパングだと違和感が…

キケロの言葉

“Non enim tam praeclarum est scire Latine quam turpe nescire.” (It is not so excellent to know Latin, as it is a shame not to know it.) — Cicero 「ラテン語を知らないのは恥であり、使えるからと言ってそれほど大層なことではない」 ―キケロ

帰刃(レスレクシオン)とかいうスペイン語

ブリーチの破面(アランカル)編にはオサレなスペイン語が沢山散りばめられていました。 例えばアランカルは恐らく"arrancar"「剥がす」ですね。 帰刃(レスレクシオン)は、「復活・再生」を意味する"resurreción"ですが、この単語の語頭のrとそれに続くrr…

パセリの虐殺

シボレス (文化) - Wikipedia 「シボレス (英語: Shibboleth) は、ある社会集団の構成員と非構成員を見分けるための文化的指標を表す用語」である。 上記Wikiで紹介されているシボレスの一例「パセリの虐殺」(パセリ大虐殺とも)については、日本語Wikiに該…

テメロッソ・エル・ドラゴ

Fateのゲーム中に登場するフランシス・ドレイクの台詞「テメロッソエルドラゴ」 恐らく綴りは"Temeroso El Drago"になると思われるが、これについて海外のファンたちが議論している(リンク先参照) www.reddit.com ・"El Drago"なのか"El Draque"なのか?日…

カカフエゴの意味 (&スピットファイアの由来)

英国海賊フランシス・ドレークが南米の太平洋岸で拿捕した、財宝を満載したスペイン船「カカフエゴ号」。 スペイン語"Cacafuego"って炎のウンコとでもいうような意味で、スペイン人はなんちゅう名前を船に付けてるんだ? カカフエゴというのは愛称で、正式名…

Anno Dominiの意味

西暦で使われる表記ADはラテン語"annō Dominī"の頭文字である。 これを日本語に直訳するとどうなるのか?日本語ウェブ上では複数説が並存しているようなので列挙してみる。 西暦 - Wikipedia ①日本語版Wikiによれば、"anno domini"は「主(イエス・キリスト…

スペイン語の青

また色の語源の話。 スペイン語で「青」はazul。 イタリア語ではazzurro、フランス語ではbleu、ドイツ語ではBlau、そして英語ではblue。 英独仏には、ゲルマン語系のblue系列(印欧語根"bhel-"にまで遡る)がある。一方で西伊のazul系列は当然古典ラテン語ま…

blancoの語源

スペイン語で「白色」に相当する単語はblanco。 イタリア語ではbianco、フランス語ではblanc。 これらに共通する語源は当然ラテン語、というか古典ラテン語まで遡れるのだろうと何となく思っていたのだが、そんなことはなかった。 Blanco - Wikipedia, la en…

英語における接続法

スペイン語の接続法の使い方がとても難しい。日本語では直説法/接続法なんて区別しないし、直感的に非常にわかりづらい。 先日、神戸市外国語大学の以下の論文を見つけた。 日本語に接続法は存在するか? 福嶌教隆, 2015 数百年前に日本を訪れた西洋人、主に…

ワリェペン

ボルヘスの幻獣辞典に、チリ先住民の伝承に登場する牛と羊の姿をした妖怪、ワリェペンが紹介されている。 スペルはHuallepenである。 柳瀬尚紀訳ではこれにワリェペンという読みを与えているが、これはスペイン本国(カスティーリャ方言)の読み方である。 …

就活11

自分の場合、本命の企業とその同業他社数社、さらに面接の練習のために金融を複数社受けた(えてして金融系の面接は他業界より早く始まるので)。2業界で約30社というのがエントリー数で、就留しているわりに大した数ではなかった。 もう書いてしまうが、結…

就活10

就活のポイントの一つとなるのが、同業他社を複数受けた方が学生にとって何かと得だ、という点だと思う。 企業側によくある一般的な考え方として、当社を受けるからには当社の業界そのものに興味を持っているはずであり、また同業他社がこの学生をどう判断し…

学部留年10

筆を擱くと言っておいてすぐに再開してしまうのだった。 学部で留年する羽目に陥った状況について、かつて自分なりに分析・総括しようと試みた。いや、大学を出た後も未だにこのことを考え続けている。 3回生時に以下の二点を発症してしまったのが、留年の直…

就活9

一学年下にまじって就活を再開したわけだが、その後はあまり書くネタが無い。 というか、ネット上にいくらでも転がっている平凡な就活体験記の一つでしかない。 前年に自分はある程度就活らしき事をしていた訳だが、全く内定に繋がらなかった。いくつかの理…

就活8

M2の冬、一学年下の合同説明会に改めて参加した。たしかビッグサイトだったはずだが、これが人生初の普通の合説(豪雪)体験であった。 実は、M2の5月頃に学内説明会に行ったとき、ある企業の人事担当者が以下のようなことを言っていた。 ・この時期まで活動…

学部留年9

5回生の冬学期の半ば。卒論は佳境を迎えようとしていた。 正直大した内容ではなく、過去に誰もやっていないだけで初歩的なテーマだったが、データは集まっていたので一応卒論としての格好はついたように思う。まあ指導教官の実験計画が上手く、物事が想定通…

学部留年8

5回生の夏学期が終わるころには、そのグループで集まって実習の課題をやったり、昼休みに根津でランチをしたり、下宿に集まって飲んだりするようになった。まるで普通の大学生生活である。 そのメンバー間では、卒論の実験と共に履修しまくった授業に追われ…

学部留年7

それから、必修科目には毎回出席した(当たり前だが)。 とある実習では、教官が自分の顔を見て「お!戻ってきたな!」と妙にうれしそうにしていた。毎年のようにフェードアウトしていく学生がいる一方、戻ってくるやつもたまにいるということらしい。 自分…