英語における接続法

スペイン語の接続法の使い方がとても難しい。
日本語では直説法/接続法なんて区別しないし、直感的に非常にわかりづらい。

 

先日、神戸市外国語大学の以下の論文を見つけた。

日本語に接続法は存在するか? 福嶌教隆, 2015

数百年前に日本を訪れた西洋人、主にスペイン・ポルトガルから来たキリスト教伝道師たちが日本語を理解しようとする中で、日本語には存在しない接続法を想定し、日本語のいくつかの言い回しを接続法として分類しようと試みていたという点が非常に興味深かった。

結論から言えば日本語には接続法は無いし、西洋人たちもしばらくしてそのことに気付くわけだが、個人的には少し違和感を持った。
それは、
「接続法って例えば英語にも無いよね?」
「何故、日本語が接続法を持たない言語である可能性をまず疑わなかったのか?」

 

この疑問は、ちょっとググればすぐに解決した。
「そもそも英語には接続法がある」

接続法 - Wikipedia

Wikipediaの上記ページにも書いてあるが、英語の

①仮定法過去:定番の"If I were a bird, I could fly."とか。

②仮定法過去完了:"If I had caught the train, ..." 「電車に間に合ってれば云々」とか。

等はスペイン語ポルトガル語等における接続法と同種の「法」"mood"ということになるらしい。※太字部分の動詞or助動詞が接続法をとっている。

①・②のケースは文法用語としては"subjunctive mood"に分類される。この"subjunctive mood"、和訳するならやはり「接続法」とするのが自然なのだろう。何故日本人は「仮定法」という用語を編み出したのだろうか…?

 

そしてさらに、Wikipediaにある3番目の「英語の接続法」例が

③仮定法現在:「彼がここにいる事が必要だ」"It is necesary that he be here."

である。自分はおそらく、学校で全くこれを習わなかった。(つまり大学受験英語の範囲外なのか?)習っていないがゆえに、that節の動詞が原型になっている上記の例文には違和感を覚える(笑) 。that節以下を"...that he should be here"とする事もでき、この場合も仮定法現在に分類されるらしい。しかしshouldはshallの過去形なのでは…?それにこのケース③は「仮定」という語のイメージからはかなり離れた用法だと思われる。

 

因みにGoogle翻訳スペイン語→英語をやってみると、

西:Es necesario que él esté acá.

英:It is necessary that he be here.

としっかり接続法で訳してくれた。

 

英語も一応接続法を持つということが分かったが、どうやらインド・ヨーロッパ語族は基本的にこのmoodを持つらしい。ということは英語の接続法はフランス語やあるいはラテン語の影響とかではなく、はるか昔の印欧祖語から受け継がれてきたのだろうか。

 

想像するに、16世紀に日本に来た伴天連達においては、中国語のような(接続法を持たない)非ヨーロッパ言語の素養を持った者は限られていたのではないか。それゆえ、冒頭に紹介した論文にあるように、日本語に接続法が無い、という可能性を見落としていたのではないだろうか。