ニュートンマスとニュートン祭

アイザック・ニュートンが1642年12月25日のクリスマス生まれな点に因み、12月25日をクリスマスではなく敢えて”Newtonmas”「ニュートンマス」と呼ぶ一種のジョークが存在する。

このNewtonmasなる単語の初出は割合古く、Wiktionaryによれば1892年9月のNature誌に「1890年のクリスマス、あるいはニュートンマスに帝国大学ニュートン会メンバー248人が物理学研究室に集まり云々」と。なんと東京帝大(現在の東大)が発祥の可能性があるようだ。

 

www.nature.com

本文が上記リンクでで参照できる。暇なので下記抄訳する。

 -------------------------ここから引用--------------------------

“A New Sect of Hero-Worshippers(英雄崇拝の宗派)”の見出しで、Japan Mail紙
が興味深い会(society)を報じている。
この会「ニュートン会」は日本でアイザックニュートンの栄誉を称えるべく設立され、
科学協会というよりは一種の結社というべきものである。
毎年クリスマスに開催される。すなわち1642年のクリスマスに不滅のニュートンが生まれたことにちなむ。
会則はシンプルである。メンバーは東大の数学・天文学・物理学の教授あるいは
卒業生あるいは学生である(ex officio members)。
一度会員だったものは常にその資格を持ち、例外はない。
この会は学部生のための会としてフジサワ、タナカ、タナカダテ氏ら―東大数学科の輝かしき第一期卒業生3人組(triumvirate)―によって設立された。
初期のころは学生の寄宿舎で開催されたが、学部生たちが卒業し助手や教授となると、
大学のより便利な天文台(observatory)(のちに地震観測所として利用される)のホールを用いるようになった。
1890年のクリスマス、あるいはNewtonmasに、248人の「ニュートン会」メンバーが初めて物理学教室に集合し、歓談とともにプレゼントが配られた。
この会には会長がいない。代わりに、威厳あふれるニュートン肖像画が一座を睥睨していた。
会は議事録やメモを残さないが、そのシンプルな内容ゆえに代々のメンバーにその伝統を伝えている。
新入生と二年生による出し物がある一方で、教授陣は短めのスピーチをするが、けして堅苦しいものではない。
続いて幻灯機が、内輪受けを狙った面白おかしい写真を映し出す。
(中略)

“Yokohama Journal”によれば、クリスマスにニュートンの誕生日を毎年祝っているのはこのニュートン会のみのようである。 

この”Newtonmas”という単語をニュートンへの敬意とともに用いる英語話者は極めて少ない。

おそらく50年ほど前(1842年)、ケンブリッジ大学ニュートン生誕200周年が祝われたであろう。そして50年後(1942年)には300周年を英国と全ての文明世界で祝うのだろう。

しかし、日本国外のNewton Club=「ニュートン会」が日本のように毎年式典を催すかというと、日本が西洋人の美的感覚に深く影響したのと同様、その英雄崇拝の本能(instinct)に強く影響しなければ、決して考えられないことだ。

 -------------------------引用終わり--------------------------

 

さて、この「ニュートン会」だが、おそらくこれは東大理学部物理学科のメンバーが山上会館で毎年年末に行っている「ニュートン祭」の原型であろう。

また日本発と思われる「ニュートンマス」なる単語は、どうやら日本語には定着せず忘れ去られ、逆に現代の英語圏でごく稀に言及されているようである。