テメロッソ・エル・ドラゴ

Fateのゲーム中に登場するフランシス・ドレイクの台詞「テメロッソエルドラゴ」

恐らく綴りは"Temeroso El Drago"になると思われるが、これについて海外のファンたちが議論している(リンク先参照)

www.reddit.com

・"El Drago"なのか"El Draque"なのか?日本語原文に従うなら"El Drago"だが…

 注)現代スペイン語"drago"は竜血樹リュウケツジュ)の意。一方の"Draque"は"Drake"のスペイン風の呼び名とされている。ドレークはスペイン人に"El Draque"と呼ばれていたらしい。

・「テメロッソ」は"temeroso"だと思うけど、"temerario"の方がいいのでは?両方とも一応「恐ろしい」の意味だが、前者だと「臆病者」のニュアンスが、後者なら「恐れられる・無謀な」のニュアンス。

・(↑に対するレス)"temeroso"でも「恐れられる」を表すし問題ない。ソースは西語話者の俺。

・文脈的には"valiente"「勇敢な・無謀な」の方が適当かも?

・彼女(ドレイクはゲーム中では女性です。念のため)は英国人だったんだ。スペイン語が怪しくても当たり前。

 

引用終わり。

ググってみたが、ドレイク="El Drago"「エル・ドラゴ」の記述はなかなか見つからない。また"El Drago"=「悪魔or竜」についても同様。(Fate関連ページしか見つからない。Fateが何をソースにしたのか気になる所である。)

 

Talk:Francis Drake/Archive 1 - Wikipedia

英語版WikiのドレイクのページでWikipedianが議論している所によると、

・"El Draque"は単なる"Drake"のスペイン風翻訳であり、人名以上の意味は無いはずだ。(→El Draqueに竜の意味は無い)

・16世紀に"El Draque"が何を意味していたのか、専門家の知識が必要だね。

 

ちなみに英語の普通名詞"drake"は「竜」を意味し、ラテン語"draco"「竜」を起源に持つ。

またスペイン語で「竜」は"dragón"。これはラテン語"draco"の奪格"dracone"由来である。どうやら、英語"dragon"もこのラテン語"dracone"から古フランス語経由で生じたようだ。

 

フランシス・ドレーク - Wikipedia

日本語版Wikiには以下のような記述がある。

「ドレークはその功績から、イングランド人には英雄とみなされる一方、海賊行為で苦しめられていたスペイン人からは、悪魔の化身であるドラゴンを指す「ドラコ」の呼び名で知られた(ラテン語名フランキスクス・ドラコ(Franciscus Draco)から」

 

さて、実際の所ドレークはスペイン人から"draco"「竜」と呼ばれていたのだろうか?

彼の名前をラテン語形にすると"Franciscus Draco"になるというのは、日本語版Wikiには出典が無いが、実際に例を見つけられる。16世紀の著述家・彫刻師で現在のベルギーに生まれたTheodor de Bryテオドール・ド・ブライの(ラテン語の)著作"Collectiones peregrinatiorum in Indiam orientalem et Indiam occidentalem (1590–1633)"ではドレークの北米上陸を描いており、そこでの名前の表記は"Franciscus Draco"である。

bancroft.berkeley.edu

もっとも、Wikiラテン語版によれば"Drakus", "Dracus" "Draken"等々複数のラテン語表記バリエーションがあるようではあるが。

Franciscus Drakus - Vicipaedia

 

また、スペイン語Wikiには、「スペインでは"Francisco Draque"の名で知られる」以外の「スペイン語の呼び名」は見当たらない。さらに言えば定冠詞付きの"El Draque"の件も、"draco"と呼ばれていたとも書かれていない

Francis Drake - Wikipedia, la enciclopedia libre

 

最後に、改めて英語版Wikiを見てみると、

Francis Drake - Wikipedia

「スペイン人には海賊"El Draque"として知られた」とある。その記述の出典は・・・なんと、先ほど紹介したテオドールの著作にリンクが張られている!

リンク先はラテン語で記述された資料であり、ドレークがスペイン人から何と呼ばれていたかには実は関係ない。

ここに至って、"Drake"="El Draque"すら怪しくなってしまった。ソース付きで確認できるのは、スペイン語Wikiにある"Francisco Draque"のみである。

books.google.es

 

さて、そもそも大英帝国の英雄ドレイク船長が宿敵スペインから畏怖を込めて「竜」とか何らかの渾名で呼ばれていたというのは、いかにも出来過ぎな感じがしなくもないが・・・島津家の「鬼石曼子」みたいに。

 

追記

Armas antárticas - Juan de Miramontes Zuázola - Google ブックス

"El Draque"のソースを発見した!Armas antárticas, Juan de Miramontes Zuázola, 1609。16~17世紀のスペン軍人が書いた詩(「南極艦隊」とでも訳すのかな)に注釈をつけたものであり、2006年発行。

註釈よれば、ドレイクはカスティーリャ語スペイン語)テキストでは普通"El Draque"と呼ばれ、時に"El Dragón"「エル・ドラゴン/竜」とも。

 

上記をふまえて、スペインを脅かした海賊ドレイクの異名をスペイン語で表現するとなると、例えば"El Dragón Temeroso"「エル・ドラゴン・テメローソ」が無難な所かな?

でもこれじゃ語感にかっこ良さが無いなw

 

また別のソースを発見したので追記

A History of the British Presence in Chile: From Bloody Mary to Charles Darwin and the Decline of British Influence, William Edmundson, 2009

epdf.tips

19世紀の記録では、チリやペルーではいう事を聞かない子供に"Aqui viene Draake" = "Here comes Drake!"「(悪い子の所には)ドレークが来るよ!」と言っておどかしたという。(Samuel Haigh, 1829)

これはローマ人にとってのハンニバルばりの恐れられっぷりであり、海賊/武人としてのドレークの面目躍如なのでは。

ここでは、彼のスペイン語の呼び名として"El Draque", "El draco", "Francisco Draguez", "Draake"等が確認できる。