学部留年6
5回生の4月、学科の最初の授業。
教室では見知らぬ学生(主に3回生)たちが席に着いてザワザワしていた。
進振り直後にあった学科のオリエンテーションで一度顔合わせはしているはずだが、専門課程一回目の選択必修授業(座学)で、まだお互いの顔と名前もあまり覚えておらず、といった格好。
教室の入り口をくぐるときに自分は思った。
「登校拒否だった子供が久しぶりに学校に来たら、こんな感覚を味わうのだろうか・・・」
実際の所、この例えは正確でない。この場合教室内の学生たちは誰一人自分の事を知らず、せいぜい「こんなやついたっけ?」と思われるぐらいである。
そんな教室に恥を忍んでよろよろと入っていったのだ。
隣に座った学生が気さくに話しかけてきたが、まさか相手が2学年上の留年生だとは気付いていない様子だった。自分はといえば、久しぶりに人と会話したような気がする。実は後に、彼とは同じ実験室に所属することになるのだった。
(Kよありがとう!あの時話しかけてくれて、どれだけ助かったか分からない)
教室を見まわしながら、こいつらとこれから1年一緒にやっていくのか・・・と、複雑な気持ちで嘆息していた。
今でもたまに夢に見る、長い一年の始まりである。