学部留年4

4年生の夏学期に取得した単位は、確か4コマ8単位だったと思う。

卒業に必要な単位に比べると微々たるものだが、1年ぶりに取った単位でもある。

 

大学は勉強と研究の場であるが、この国ではそれとはいささか異なった側面も持っている。それはすなわち、専攻内容にかかわらず、卒業要件を満たす卒業見込みとなって初めて、学生は新卒として就活に臨めるという点である。

この点にだけ注目すると、あたかも新卒チケットを得るため、学費を払って単位を買っているような様相を呈してくる。

自分の3年生時の学費も上乗せされていると考えると、本当に単価の高い(コスパの悪い)8単位になったものである。

 

4年生の冬学期も、夏学期と同様に他学科の一限ばかり履修することになったが、当然ながら卒業に必要な単位には全く達しないので、卒論以前の問題として留年が確定していた。

親に留年の事実を告げたのは4年生の冬頃だった。両親の、特に母親の悲嘆ぶりはひどく、まあそれまでは東大に現役合格した自慢の息子と思われていたわけで、留年の不名誉というのはまさに青天の霹靂であったろう。

 

形式上所属している研究室には全く顔を出さず、まるでリハビリでもしているかのようにチマチマ他学科の授業を履修していたわけだが、さすがにこの時期にはラボの教官に呼び出しを食らった。卒業の意志があるのか(つまりいずれ卒論を書くのか)という確認である。